プロフィール

はるほん

Author:はるほん
とりあえず毎日本を読んでいるので、そろそろ脳内と本棚を整理してみようというココロミ。

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

05月 | 2017年06月 | 07月
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -


twitter
検索フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-

Comment

Comment Form

Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
-

Trackback

Trackback URL

94

かずら野

かずら野 (新潮文庫)かずら野
乙川 優三郎/新潮社





by G-Tools


桑の葉が透けて
若葉のように見える陽の濃さであった



冒頭文である。
この一文に、目が潰れそうなほどの強い陽射しと
鮮やかに濃い天空と湧き上がる白い雲が、瞼に映る。

乙川氏の文章は、なんと言ってもこの繊細さだ。
雨に濡れそぼつ草木の重み 温い水の透明度
落葉が地に触れる微かな音 空気の静かさ
氏の作品を読んでいると
そんな気配の無さまでもが凛と感じられるようで
騒がしい外界と遮断されたかのように美しい。

窮乏した武家に生まれた菊子は
知らされずして、商家の主人に妾として身を売られる。
絶望した菊子の目の前で、主人は絶命する。
跡取り息子・富治の手によって。

富治と共に故郷を捨て、流されるように夫婦となる。
その地で生きていこうとする菊子の決意も虚しく
堪え性のない富治の為に、またその地を追われる。

橋田寿賀子のドラマのように続く不幸の輪廻に
もうやめて!菊子のライフはもう0よ!
と叫びつつ、繊細な文章で綴られる寂寥感にもほうとなる。
容赦ない程の人の弱さと生の美しさ。
だが、これこそが乙川氏が描く世界の醍醐味なのである。

心に残る作品とは、イコール心を揺すぶられた作品であろう。
それは笑いであったり涙であったりと様々だが
爽やかな読後感を生むハッピーエンドより
不幸な結末は存外、印象に刻まれてしまうのではないかと思う。
「心残り」と言った方が正しいかもしれない。

だが勿論、不幸なだけでは読後感が悪いだけで
むしろ以降は手に取りたくなくなってしまう。
隠し味が一匙あってこそ、「また読みたい」と思えるのだ。

流浪するその運命が行きついた場所で
菊子が吐き出した言葉の意味は、読者には計り知れない。
だがそれは確かに、小さな「心残り」を胸に生む。

個人評価:★★★★


著書もそれなりに持っているので
以前から一冊書こうと思ってはいたのだが
すべてが美しい文章と心に刻まれるラスト過ぎて
「どれが一番」というのが決め難い。

自分が一時にハマって続けて読んでしまった所為かもしれないが
「どれもいい」とも言えるし、「どれでもいい」とも言えるのだ。
その中で比較的記憶にあったので、今回の「かずら野」か
「喜知次」か「五年の梅」にするかで迷った。

平均値が高いのが氏の文章の欠点と言えば欠点かもしれないので
大人買いをしてまとめて読むよりも、
味わいを深める為、間をおいて読む方がオススメである。
関連記事
スポンサーサイト
0

Comment

Comment Form

Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
0

Trackback

Trackback URL

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Return to Pagetop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。