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国銅 上・下

国銅〈上〉 (新潮文庫)国銅〈上〉
帚木 蓬生/新潮社





by G-Tools


帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)氏と読む。
現役精神科医の小説というのに興味を惹かれ
「閉鎖病棟」を購読したのが、氏の本を読んだ最初だと思う。

自分が門外漢だからかもしれないが
医療小説は専門知識臭さというか、ハッキリ言うと
インテリっぽさが味だと思っていたのだが
氏の小説は、普通に娯楽小説として楽しめた。
無論、舞台が精神病院という特殊な場所で
医師としての経験が素地にあるからだとしても
ストーリー構成も十分に面白かった。

医師で医療小説を書いた人は他にもいる。
が、歴史小説を書かれた人は、珍しいのではないだろうか。

頃は奈良の大仏造立が発布された時代
有数の銅産出国であった長門(※今の山口県あたり)で
人足として役についていた国人(くにと)という男の物語だ。
役とは、税金として一定期間力仕事に従事することを言う。

最初は「掘場」という石を切り出す役についていた国人は
死んだ兄の代わりに石を熱加工する「釜場」へと移り、
更にたたらを踏む「吹場」へと抜擢される。
一方、村には岩壁に仏を掘る僧がおり
国人に彼から文字と薬草の知識、そして行基上人の存在を教えられる。

苦役や大仏造立に駆り出された人足達は、他にもあったろう。
だがその多くは恐らく、重労働に耐えるだけで
自分が何をしているかも分からぬ分業の一端であったに違いない。
だが国人だけは、銅が生まれる過程すべてに立ち会い
その意味を知って携わっているのだ。

大仏造立の詔に、長門から15人の人足が都へと連れていかれる。
だがそれはまさに「連れていかれる」だけで
復路はただ放り出されるだけのものだった。
再び長門の地を踏むまではと、国人は大仏を見上げる。
今は都の何処からでも見られる大仏の姿は
同時に建立されている仏殿に、やがて覆い隠されてしまうのだ。

個人的に銅の産出にも興味があったので
歴史小説としても楽しく読めたのだが
医師が描いた小説と言う点でも興味深いものがあった。
薬草と言うアイテムが出てくるものの
国人の周囲の人間たちは、呆気ないほどに多く死んでいく。

それは確かに史実に近いのであろうし
むしろ医療という現場にいるに人間だからこそ
奇跡という手段を軽々しく扱えないのかもしれないとも感じた。

大仏という素材を扱いながらも、仏教臭さは薄い。
その分、銅をはじめとした民衆の生活が生き生きとして見える。
特に食べ物の描写が、無駄に旨そうである。(笑)
贅沢ではないが、自然と共に在ったその時代がよく感じられる。

今でこそ気軽な観光名所にもなっている奈良の大仏だが
当時、仏教は貴族のステイタスのようなものであり
民衆には何処か現実感のない、幻に近いものでもあった。
その温度差が、仏教臭さの薄さからも伝わってくる。

歴史と言う浪漫として、もう少し夢があってもいい気がしなくもないが(笑)
これはこれで面白いアプローチだと思う。
何より、1つの時代を書ききるというのは偉業である。

更に帚木氏は戦争ものや、絵本の原作も手掛けているらしい。
なんとも引き出しの多い方である。
こちらもいずれ読んでみたいものだ。

個人評価:★★★★
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