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女中譚

女中譚 (朝日文庫)女中譚
中島京子/朝日文庫





by G-Tools


「女中」という少々アナログな言葉に惹かれて購入。

が舞台はなんと、現代のアキバのメイド喫茶だ。
語り手であるスミと言う老婆は平然とここへ腰をおろし
「いつもの」とコーヒーを注文する。

なんでババァがここに居るのかって?
まぁしいて言うなら、メイド繋がりだね。
アタシも若い頃、女中をしていたのさ。

アンタは知らないだろうけど、メイドって言ったら
昔は亀戸の私娼婦のことを言ったもんさ。
アタシはドッチもやったよ。
でもあの子たちのエプロンは、カフェーの女給みたいだね。
アタシもつけてたもの。

自称「元祖メイド」(?)の達観した語りに
思わず話に引き込まれていく。
コーヒーをすする梅干しみたいな婆さんの姿が(失礼)
不思議と豊かな黒髪をきりりとあげた横顔に
艶っぽい仕草でカップを弄んでいるように見えてくる、

3つの連作短編集。
「ヒモの手紙」は 、林芙美子「女中の手紙」
「すみの話」は、吉屋信子「たまの話」
「文士のはなし」は、永井荷風「女中のはなし」が
それぞれ下地になっているらしい.
元ネタがわからなくても読めるのだが、ちょっと読みたくなる。

例えば「女中の手紙」は恋人に騙されて売られた女中が
金を無心する男へしたためた書簡小説であるらしいが
「ヒモの手紙」では、それをスミが代筆していると言う寸法だ。
恐らく、林芙美子と吉屋信子の作品では
架空の裏キャラとしてスミが「居たことになっている」が
永井荷風の作品では、スミは「ちゃんと描かれている」のである。

スミが荷風になんらかの感情を持っていたのか
本書ではそのしたたかさに隠れて、はっきりとは見えない。
だがその原作であろう荷風の文章が、そこに引用されている。

強者を称美し、強者を崇拝するのが
今の世に活る人の義務のやうになつた。
そして、強者になりたくもなれない者が
自らその弱さを知つて諦めの道に入ろうとすれば
世はこれを目して卑屈となすよりも
寧ろ狡猾奸譎として憎み罰するやうにも思ひなされて来た

女中と言う言葉にアナログイメージを持つか
裏方や下働きと言うイメージを持つかは、人それぞれだろう。
だがスミは荷風が己に描いた
「お前は見方によっては、今の世に謂う一種の強者かも知れないね」
というイメージで、つんと顎を反らせて生きていくことが
生涯の職務だと思っていたのかもしれない。

アキバでミニスカートと珍妙な言葉を喋り
したたかに生きていく女の子たちが
スミの目には好ましく、また強い仲間意識があったのだろうか。
無論、すべて憶測でしかないが
荷風の言う通り、弱い部分をいっそ謎としてしまうことが
強者として生き抜く者の義務であったのかも知れない。

捉えがたいスミの輪郭に、歯痒いような切ないような心地になる。
ふとスミが、皺くちゃの口でにんまりと微笑む気がする。
「やっぱりアンタ、アタシに惚れたね」

断じてそんなことはない、と首を振りつつ
スミは果たして幸福であったのかを知るために
せめて荷風の作品くらいは読みたいと思う自分がいるのだ。

個人評価:★★★★


朝からFC2にログインできなくて
とりあえず今アプリであげたのだが、読み直しが出来ていない。

また後で確認しにくるです。
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